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『カミの震撼する日 -2005年の日中米大衝突』 ピータータスカ(著) 田村義進(訳)


カミの震撼する日.jpg



米国における 慰安婦決議案の騒動を見て、ぜひ取り上げてみたいと思った一冊です。

小泉政権が、“自民党をぶっ壊す” と絶叫し、熱狂的な支持で誕生したのが2001年4月、同年の9月11日にアメリカで同時多発テロが起こります。間髪いれず、アメリカはアフガニスタン侵攻を決行。日本もテロ対策特別措置法を作り、自衛隊がそれを後方支援しました。

大混乱の中、翌2002年の1月に田中真紀子外相を更迭し、内閣支持率が一時的に急落します。鈴木宗男氏が脚光を浴びるのもこの頃ですが、秘書給与問題などのスキャンダルが続発し、田中真紀子氏や鈴木宗男を追求していた辻元清美、さらに加藤紘一氏らまで失速。

そして、あの電撃的な北朝鮮訪問が同年の9月17日ですね。


本書はその直前、2002年7月に出版されました。2005年の世界を予言した近未来小説という形ですが、今ならそれを検証できますね。


筆者のピータータスカ氏は、ビジネス書などを数冊書いていますが、本職は作家ではなく、日本分析をする英国人アナリスト。なんと5年連続日経新聞のベストマーケットアナリストに選ばれているほどの日本経済通です。

同じイギリス人、同じ年代、同じ日本通のビルエモット氏が書いた、『日はまた昇る』 は日本経済の復活を予言しました(ただし2006年ですが)。今のところは確かに、GDPは成長を続け、株価も徐々にもどっていますね。

(そういえばタスカ氏とエモット氏の共著『日本の選択』が今月発売されています)


さて、本書です。副題が「2005年日中米大衝突」。物語自体はとてもおもしろく読むことができました。小泉改革が失敗し、大手銀行5つが合併して作った銀行も破綻、日本の経済、社会は大混乱。そこに元シンガーの右翼政治家 “ノザワ” が登場し、日本中の期待を一身に背負うのですが、影でノザワを利用しているのは…。

そして、その頃中国は日米分断を狙う、アメリカのたくらみは…というストーリーです。当時、石原慎太郎首相待望論が強かったことや、小泉首相が誕生した時の熱狂を考えれば、小泉改革で銀行をつぶしていたら、このストーリーも荒唐無稽とはいえないと感じたものです。


幸いなことに、現実には経済に関する限り筆者のストーリーははずれでした。確かに外資の手にわたった銀行もありますが、少なくともメガバンクは完全に立ち直りました。竹中平蔵氏の不良債権処理や、りそなへの公的資金投入がきっかけと評価されていますね。

政治の方はどうでしょう。本書では中国の策略にはまり、日本はアメリカとの同盟を打ち切り、ナショナリスティックになり軍事大国の道を歩み、世界から孤立するというストーリーです。

そう言えば防衛省に格上げされ、核武装が論議されています。久間防衛庁長官の発言が波紋を広げました。また外からは良好に見える日米関係ですが、手島龍一氏はずっと前から、テレビでさかんに、日米関係を修復せよ、外務省は機能していないと主張していました。

先日、『反日の構造(西村幸裕)』を取り上げましたが、今回の慰安婦の問題が日米でこじれるとやっかいですね。中国や韓国の国会や裁判所で問題にするのではなく、アメリカの議員を動かすあたりが不気味です。首相の発言も徐々に強気になっています。


筆者から見れば、日本は常に何もしないことを選択しているという分析が根底にあり、それを続けた場合、日本の近未来は本書に描かれている社会に近付いていくかもしれないというわけです。

氏によれば、明治維新と第二次大戦後で、日本はこれまで二度どんぞこから再生したけれども、その担い手はどちらも官僚たち。彼らは傲慢で無責任だが、それでも国民は彼らのおかげで強い経済と高い生活水準がある。そのためにがまんもできたのだが、今度ばかりは官僚がまったく機能していないという見立てです。

400ページ近い長編ですが、まだまだこの先の話を読みたくなるような展開でした。エモット氏との共著も出ておりますので、お薦めというより、ご紹介でした。




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『カミの震撼する日 -2005年の日中米大衝突』 ピータータスカ(著) 田村義進(訳)
講談社インターナショナル:384P:1890円




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